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真心の伝わる政治を!
大串 ひろやす
平成15年第2回定例会
生涯学習社会の実現を目指して!
〈質問通告〉
生涯学習社会の実現を目指して!
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区長に生涯学習のあり方、基本的な目標を問う
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第二次生涯学習計画の特徴は何か
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生涯学習推進のための具体策について
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情報の提供と相談の体制を整備せよ
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学習の成果をまちづくりに生かせる仕組みを作れ
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学習成果提供バンクと学習成果募集バンクを作れ
〈質問と答弁の全文〉
平成15年第二回定例会にあたり公明党議員団の一員として一般質問させていただきます。
私は、生涯学習の推進について3点質問させていただきます。
現在、江戸開府400年事業もたけなわですが、江戸時代の特徴について若干触れさせていただきたいと思います。たくさんある特徴の中であえて一つだけ上げるとすれば私は、「教育」を含む「学習」にあると答えます。
そのわけは何より徳川家康が取った政策がそこにあったからであります。またそういう時代の来ることをあの社会情勢の中、予想したこと自体驚くべきます。家康が愛好した書物は「貞観政要」であったと言われています。この「貞観政要」とは西暦600年代の中国、唐時代に、真に民衆のための政治を行った太宗皇帝の政治に関することを問答形式にて書いてあるものです。この唐の時代は道徳的文化国家といわれ約300年間続いたことは皆様もご存知の通りです。家康は1600年2月(関ヶ原の戦いの始まる半年前にあちりますが)この「貞観政要」を木版により出版させ、広く一般にまで流布させました。このようなことはそれまでなかったでしょう。織田、豊臣の時代は武を競って天下を取ってきた時代でしたが、家康はこのとき既に戦乱が治まって平和な時代が来ることを予想し、その時は「学術」を盛んにすることを何よりも政治に必要だとし、この書籍の出版に着手したのでした。私もこの貞観政要を古本屋にてやっと手に入れ少し読みましたが、それはすばらしい内容で感動いたしました。
また、二代将軍秀忠に仕えた板倉重宗は、名京都所司代として有名です。彼の約30年間の政治を「板倉政要」と讃え永く後世まで、模範とされたことからもいかに優れていたかを知ることができます。彼はもともと才識抜群でしたが、「戸枢むしくわず、流水くさらず」の金言を守って生涯勉学に励まれ、しかも自分だけでなく講堂をつくるなどして講師を招いては多くの人々と一緒に学んだそうです。まさに今でいう「生涯学習」に力を入れての政治を行ったと言えるでしょう。
また、上杉鷹山は藩の財政建て直しに有名ですが、実は当時多かった飢饉対策として食の保存や50科144種に及ぶ救荒植物を紹介した「かてもの」(今ふうに言えば食材から調理法まで紹介したレシピにあたるそうです)という普及書を1,575冊も刊行し広く農民、町民に配り共に学んだそうです。私はこのような「学び」があったればこそ彼の改革は成功したと思っています。
このように江戸時代には、「学術」、「学習」や「学び合い」の仕組みが広く行き届いていたことが特徴と言えるのではないでしょうか。まさにそのことが徳川300年の平和につながったと思います。
さて、ここで改めて生涯学習とは何か、確認しておきたいと思います。
平成8年に開かれたユネスコ21世紀教育国際委員会では、生涯学習は「21世紀の扉を開く鍵」と言い、ラ・フォンティーヌの寓話「秘められた宝」にも例えられています。「秘められた宝」とは宝物が隠されているという土地で宝物を探すよりも農夫として土地を耕して収穫を得たほうが良い。その土地を耕す行為が実は宝なのだと言う寓話です。なるほどと言う気がします。
一般的に生涯学習とは
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自己の充実・実現や生活の向上を目的とし、
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各人が自発な意思に基いて、
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自己に適した手段・方法を選んで、
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生涯を通して行われるもの。
とされています。さらに、この自己の充実・実現とは自己がこうありたいという理想の姿の実現や自分の潜在的な可能性(能力)をどこまでも発現していくことにある、と。まことにすばらしい概念であります。
昭和62年の臨時教育審議会答申において生涯学習体系への移行が提唱され平成2年6月には根拠法としての(略称)生涯学習振興法が制定されました。以後、全国各自治体とも第一期とでもいいましょうか、本格的に生涯学習施策がスタートしたわけであります。この根拠法の目的には「国民が生涯にわたって学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、(中略)地域における生涯学習に係わる機会の整備を図り、もって生涯学習の振興に寄与することを目的とする」とあります。よく言われる誰もが、いつでも、どこでも学習できる環境の整備です。つまりは、「生涯学習のできるまちづくり」とも言えます。
それでは第二期はいつからで、何が変わったのかということですが、私は平成11年の国の生涯学習審議会(今は中央教育審議会生涯学習分科会となっているそうですが)から「学習の成果を幅広く生かす」と言う答申が出されましたが、それを境に第二期に入ったと思います。第一期は、まずは誰もが「学ぶ」ことそのことができるようにしましょう、と。勿論今後もそのことは大事ですが、第二期はそれをさらに一歩進めて学んだ成果を様々な分野で生かしていける。つまりは第一期を「生涯学習のできるまちづくり」とすれば第二期は「生涯学習によるまちづくり」ということができると思います。このことに関しては国民の意識の変化も総理府の行った「生涯学習に関する世論調査」をみても確認できます。平成4年と12年の結果を比較してみて増加率が高いのは「ボランティア活動やそのために必要な知識や技能」が+5.7%でトップ、以下「家庭生活に役立つ技能」が+2.2%と続きます。一方「教養的なもの」や「趣味的なもの」は減少しています。つまりは生涯学習の個人的な側面というようなイメージから社会参加やボランティア活動への関心度が高まっているとともに、地域における生活課題の解決に結びつくような学習内容が求められるように変化してきていることがわかります。このことは千代田区でも先日、中間発表会が行われたそうですが、「まちづくりサポート」に嬉々として取組んでいる多くの人々の様子からも伺えます。各グループがまた交流を通して着実に力をつけてきているそうです。その交流の場も大事な「学習」「学び合い」の場と言えるでしょう。
個人個人の生活や価値観の多様化、自由時間や余暇時間の増大、少子高齢化の急速な進展、工業社会から知識社会・情報化社会へ、そして何よりも協働型社会を迎えたことが、改めて生涯学習のあり方を再び問うているのではないでしょうか。
そこで区長に生涯学習のあり方、また区の目指す基本的な目標は何か、お伺いします。
次にこの度策定された第二次生涯学習計画についてであります。この計画の特徴をお伺いする前に、第一次の計画について触れておく必要があります。平成6年12月に策定されましたが、公募区民を募り57名からなる生涯学習推進委員会をたちあげ、それぞれのテーマごとの分科会に分かれて住民自らが策定したものであります。その中には「生涯学習の意義」も定められています。
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生涯学習とは
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個人からみた生涯学習
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地域からみた生涯学習
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総合行政施策としての生涯学習
の4点であります。これらはいつの時代になっても通ずるすばらしい内容となっています。当時としてはまさに画期的な計画となりました。生涯学習を実施する主体は当然区民であります。よって行政が一方的に決めて区民に強いるものではありません。その意味からは第一次の計画はきわめて評価されるものです。
さて、この度の第二次計画については平成12年度、13年度の期の生涯学習推進委員会にて検討が重ねられ策定へとなったわけですが、一次計画から二次計画へ何が引き継がれ先ほど話したような社会の変化にともないどこが新しくなったのか、そして特徴は何か、お伺いします。
次に生涯学習推進のための具体策について提案も含めて3点お伺いします。
千代田区には様々な分野で活躍する人材や施設、学習機会、活動機会などに恵まれ多種多様な生涯学習資源が存在しています。こうした千代田区の特性を有効に活用し、「生涯学習」に自発的に参加できるようにしていくためには、まずもってわかりやすい情報の提供と相談できる体制の整備が急がれます。私は、そのための機関、拠点として各地域の図書館を利用できないかと思います。生涯学習のこれからの重要性を考えると官であれNPOであれそれなりのプロもコーディネート役として必要だからです。「学習」「学び合い」に関しての相談や情報提供に司書の方の持っている専門性は大変参考になると思うからです。この点も含めて、生涯学習推進のための具体策の一番目として情報の提供と相談できる体制についてどう整備されていくのか、お伺いします。
次に先にも触れましたが、平成11年に出された生涯学習審議会からの答申「生涯学習の成果を生かすための方策について」には、学習者が学習によって得られた成果を身近な地域社会でどのように生かしていけるのかが社会的な重要課題であると指摘しています。そして学習者が得られた成果を地域に何らかの形で貢献することにより、そこには新たな学習の場ができる。そして再び地域の還元につながっていく、と。先ほどの千代田区のまちづくりサポートはこのいい例でしょう。このような「生涯学習によるまちづくり」への具体策としては、行政と区民との情報の共有がまず必要なことは言うまでもありません。その点に関しては、職員による出前講座いわゆる「ほりばた塾」は是非とも充実させたいものです。私もつい先日(土曜日の夜で10人ほどの参加者でしたが)ある出前講座に参加する機会がありました。その担当された課長の最初の言葉もすばらしかった。「この出前講座は教える人、教えられる人の区別はありません。私も含めてみんなで学び合うのが基本です。」と。まさにその通りであります。この出前講座の他にも区民の自主企画講座への支援など考えられますが、具体策の2番目として生涯学習の成果をまちづくりや地域の活力に生かしていく仕組みとしてどのようなものを考えているのか、お伺いします。
学んで得た成果を提供しようとする学習者と今度は受けたいという希望がある人が活用の場、機会とも適切にマッチング、結ばれるていく必要があります。これまでの人材バンクが設けられ学習成果の活用を図ることが試みられてきましたが、必ずしも満足な結果が得られていません。そこで提案ですが、学習者の生かしたい学習の成果や参加を希望する活動の内容、形態等を登録する「学習成果提供バンク」と個人、グループ、団体、企業、行政等が学習成果を受け入れて実施しようとする学習や事業内容・構想等を登録する「学習成果募集バンク」を整備してインターネットを通して全国どこからでも検索・活用できるようにしてはどうでしょうか。旧来の人材バンクにプラスして新しい人材バンクのあり方として提案します。ご所見をお伺いいたします。
以上、生涯学習について3点質問をさせていただきました。
教育と文化のまち千代田区の「生涯学習」には、さすが、「江戸開府以来のあの『学び合い』の姿勢が今もきちんと引き継がれている」と言われるようありたいものです。
区長並びに関係理事者の前向きで積極的な答弁を期待し私の一般質問を終わります。ありがとうございました。
〈区長答弁〉
大串議員のご質問のうち、区が目指す生涯学習の基本的な目標についてお答えいたします。
まず最初に、江戸開府について、今いろんな観点から江戸時代のとらえ方をしております。しかし、共通しているのは、300年平和であったということについては皆同じ考え方でございます。そうしたなかで、このバックグラウンドが教育や学習であったというお話でございまして、私も改めて再認識をさせていただいたところでございます。
さて、生涯学習については、お話がございましたように、基本は自分がこうありたい、自己実現ということであろうと思います。そして、そのことが生きがいを持って充実した生活が送っていけるということでございます。確かに、10年以上前は、そのための生涯学習施策のポイントは、機会と場の提供とうことが中心であったと思います。しかし、今日、むしろそうした機会と場の提供ということから、お話にもございましたように、生涯学習というものを通じて、様々な分野へそうしたものを生かしていく。まさに、ボランティアを含めて、社会参加という時代でございますから、ある面では協働型社会、すなわち、ともに働きつくっていく社会というのが今日求められている時代だろうと思います。
こうしたことを背景にして、今回の第二次改訂計画は、基本的に、個人の学習の成果を地域に還元し、地域コミュニティの活性化や魅力あるまちづくりへとつなげていくことにより、さらに大きな生涯学習の成果が得られるよう、生涯学習社会を実現していきたいというのが第二次計画の基本でございます。そのためには未来につなげる生涯学習というのが基本理念として二次計画の中に入っておりまして、これもまさに学習の成果がいろんな分野で還元され、そしてともに働きつくっていくという協働型社会の実現の大きな目標だとうふうに私は思っておりまして、お話の点、あるいはご質問の点については、基本的には軌を一にするものだろうと思っております。
さらに千代田区の特徴を申し上げるならば、千代田区にはこの地域に11の大学がございます。その他、各種の専門学校を含めて、学習の機関というのは大変ございます。あるいは、NPO一つとってみましても、大変多うございます。すなわち、幅広い生涯学習の資源がこの千代田区にはあるというのが、他の22区、あるいは日本の大都市とは基本的に違うというふうに思っております。
そうしたことを考えましたときに、この千代田区内の生涯学習の資源たる、例えば大学での公開講座や大学の図書館とうものをいかに区民の皆様に開かれたものにするかということで、今、順次進めておりまして、将来的にはそうしたことのネットワーク化というものも図っていかなきゃいけないというふうに思います。
このように千代田区には、この11.6平方キロメートルという中に、まさに区の行政というだけではなくて、多様な社会学習・生涯学習の豊富な資源があるということを私は改めて認識をし、そして区民の皆様方の生涯学習を自己選択・自己決定という、そういう場から進めていくことがこらからの肝要なことだろうというふうに思っているところでございます。
なお、詳細につきましては、関係理事者をもって答弁させますので、よろしくお願いいたします。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の質問のうち、第二次生涯学習推進計画についてお答えいたします。
まず、本計画は、生涯学習の意義など、第一次計画の基本的な考え方や事業の成果を引き継ぎ策定いたしました。さらに、区民の学習環境や生涯学習に関する意義の変化、新たなニーズなどに柔軟に対応するとともに、所管を教育委員会から区長部局へ移管したことを踏まえ、改めて生涯学習を区民生活の全般にわたる活動としてとらえた、総合的な計画といたしました。
本計画の主な特徴といたしましては、第一に、区民の自主的な判断・選択を何よりも重視していることでありあます。そのために既存の講座・講習会のあり方を見直し、生涯学習個人補助金制度、いわゆるバウチャー制度や職員の出前講座など、個人の選択の幅を広げた事業を新たに構築いたしました。
また、第二に、学習の成果を生かし、地域に還元することを重点課題として掲げ、区民自らが企画運営する自主企画講座や自主グループ育成支援などを位置付けております。
第三に、生涯学習のきっかけづくりとして、江戸開府400年事業を位置付け、多様な区民の活動を支援し、結集した活力をさらに魅力ある千代田の文化芸術施策に生かし、取り組みを進めたことが挙げられます。
〈区民生活部長答弁〉
次に、その具体的な推進施策についてですが、まず、情報提供と相談体制を充実させるために、生涯学習のホームページを中心とした情報ネットワークの整備を行います。そこでは、学習情報だけでなく、個人やサークル・団体の生の声や最新イベント情報なども検索できるようしてまいりたいと考えております。
また、学習の成果をまちづくりや地域の活力に結びつけるための仕組みづくりとして、議員ご提案のインターネットを活用した検索等も含め、利用しやすい人材バンクの検討や活動しているグループ同士の交流機会の充実を図る所存でございます。
今後も、幅広い区民の皆さんのご意見・ご要望を反映した施策を積極的に進めてまいりたいと考えております。
〈再質問〉
自席から再質問、一点だけさせていただきます。
情報の提供と相談できる機関として、図書館を活用できないかといいうことでお伺いしましたけれども、特に、司書の方の持っている様々な専門性というのは、これからの生涯学習の中で果たす役割は大きいとおもいます。この点だけお伺いできればと思います。
〈区民生活部長答弁〉
図書館の司書を活用した情報の提供ということでの再質問ですけれども、先ほど区長から答弁もありましたように、区内にはいろんな資源がたくさんあります。特に図書館は10大学との連携も今進めているところでありまして、こういう千代田区自体の図書館の活用も含めまして、相談できるような話し合いもこれからしていきたいというふうに思っています。
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